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おまえが俺に会いたくなったとき、俺もおまえに会いたくなるだろう。
携帯を貸してと言われて渡すと、美優は俺の携帯から美優の電話番号やメアドを消して、美優との履歴もすべて消した。
俺がまた泣きそうだ。
「写メは撮ってないよね?見てもいい?」
俺は頷いて、美優は俺の携帯に残る写メを見る。
「ワイヤークラフトなんて撮っていたんだ?これも消すね。……かわいい寝顔の子がいるよ?」
美優は俺をからかうように見て、俺は美優から携帯を返してもらうと、それを消そうとした。
千香の寝顔。
美優の手がそれを止める。
「やめて。隆太の気持ち、消さないで。……大丈夫だよ。待っていていいんだよ。忘れようとしなくても、いつかは忘れる。忘れられるまで無理に動こうとしなくていい」
「…嫌なんだよ。待ってるの。待っていても千香は俺に心をくれない。俺は愛されたい。だから…」
「私に甘えるの?」
そう聞かれると言葉に詰まる。
甘えてる。
美優は美優の携帯から俺の電話番号とメアドを俺の目の前で消していく。
「…偶然会えても無視はしないから。偶然会えること願ってるね。…隆太なら、そのとき、また別の誰かといるかもしれないし、あの子といるかもしれないけど」
「…今ここにある俺の気持ち、無視してるくせに」
「甘えてるだけのくせに」
…それを言うな。
俺の口説き文句がなくなる。
「……メアドくらい残してくれたらいいのに。家いくぞ」
「ドア開けない。家にきそうな友達には事前連絡お願いしとく」
「それ、きっぱりしすぎだろ?俺に抱かれて気持ちよさそうに喘いだくせにっ」
「…もう。そんなふうに引き留めちゃいや。…気持ちよかった。いっぱいいっぱい隆太を感じたよ?」
「もう一回」
俺が言うと美優は笑って流して、鞄を手にして立ち上がる。
駅まで手を繋いで歩いた。
車で送ろうと思ったのに歩きたいって言われて。
切符を買って美優は改札を潜る前に俺を見て、背伸びして。
俺は少し屈んで駅の改札前で軽くキス。
美優は俺に恥ずかしそうにうれしそうに笑ってみせて、また明日も会えるみたいに軽く背中を向けていってしまった。
…もっと理由にならない理由をくれたらよかったのに。
振り返ってバイバイと美優は俺に手を振った。
改札飛び越えて捕まえたかった。
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