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車を出してやってミクに案内されるままにその家に送ってやる。
飲んでいたら車に乗らないからできないけど飲んでない。
「こっちの家、コウちゃんに教えてないんだ」
「なんで?」
「実家だからって言ってるほうが、コウちゃんの家にあがりやすいもん。送ってくれてありがと、リュウちゃん」
彼氏の話をするくせに、なんのお礼かミクは俺の唇にキスをしようとしてきて、俺はそれを手のひらで防いだ。
ミクは俺の手のひらにキスして、その閉じた目をあけて俺を見る。
「なんでキスしようとしてるんだよ?」
コウが他の女にキスしてると愚痴っていられないことをしようとしてくれる。
これはやっぱり多股女だろうか。
「お礼…」
「別にいらない」
美優なら喜んでもらってるとこかもしれないが。
ミクはそんなんじゃない。
誰とでもセックスは今はもうできないかもしれない。
キスもできない。
美優を傷つけすぎて、その涙が俺の中に残りすぎていて、他の女になんていけない。
俺が振ったのかもしれないけど、俺が振られた。
せめて友達と俺が思っても、友達にもしてくれない。
「リュウちゃん、かたくない?」
ミクは不満そうに言ってくれる。
「もうちょっと軽かったはずなのにな。ま、おまえも自分を安売りすんな。もっといいもの貰ったり、してくれたときの褒美に差し出せば?」
小悪魔彼女のやり方。
あれはあれでミクみたいな安売りでもなかった。
一晩だけの女になるのは安売りの極みかもしれない。
そんなの俺は興味ない。
ただの性欲発散させてくれた相手と認識。
「いっぱい遊んでもらって送ってもらったよ?」
「俺も暇していたからいいよ。おやすみ」
俺は軽く手を振って、ミクはそれ以上はなにも言わずに俺の車をおりた。
車を走らせて、角を曲がる前にミラーで後ろを見ると見送ってくれていた。
少し軽いのは気になるけど、かわいい彼女だなとコウに思う。
コウの好みははかれるものでもないけど、奈緒美や美優を考えると、あれもあてはまるんじゃないだろうかと思える。
俺がいいかもと思えた相手は、だいたいコウも気に入っている。
そのつきあいの長さは別として。
俺も…誰かにかまってもらいたい。
そんなふうに考えて、帰り道に美優の住むワンルームの前までいって。
溜め息をついて家に帰る。
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