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千香には2度と会いたくないようにも思う。
千香に会うことがなければ、美優と戻れるんじゃないかと、連絡先もないのにまだ思ってる。
諦め悪い。
でも忘れられない。
一番で二番で。
ただの甘えかもしれない。
それでも俺の愛した人。
美優の言った偶然を探して遊びには出る。
まったく偶然でもなく、美優がいそうなところに出ている。
会えない。
どれだけ会いたいと思っても会えない。
行きつけの店だって俺は知らない。
短すぎた恋愛。
手を出すのを我慢していれば、友達としてならもう少しつきあってくれていたのにと悔やむ。
……欲しかった。
コウにとられたように思っていて、取り返したかった。
そんな傷心の俺を引っ張り回すのは、なぜかミクだ。
コウにかまってもらっていればいいのに、コウがかまってやらないと俺にかまってもらいにくる。
コウの目の前でもかまわずに。
コウに嫉妬させたいのかと思って、もちろんそんなものにつきあってやらないけど。
「リュウちゃーん」
なんていうミクの声が聞こえたかと思うと、警戒する間もないまま、俺の腰には後ろからミクがくっついてきた。
目の前にいた女はあからさまに嫌そうな顔を見せる。
女の敵が多そうだなとミクに思う。
「聞いてよ、リュウちゃんっ。コウちゃん、ひどいんだよっ?」
なんて愚痴を俺の腰に抱きついたまま話す。
いや、おまえも他の男に抱きつきながら愚痴るのは違うだろと思う。
俺は男じゃなかったのかもしれない。
そんなふうにも考えてみる。
「ちょっとミク。コウとつきあってるのに、リュウに手、出すな」
見かねたかのように女はミクに声をかけて、ミクは今気がついたかのようにひょこっと顔を俺の後ろから見せる。
「リュウちゃん、狙われてるの?…やだ。あげない」
ミクは更に俺にくっついてきて、その場で意味不明なケンカをしてくれる。
「はいはいはい。おまえら、ケンカすんな。俺はどっちともつきあってないっ」
ケンカを止めるように言って、ミクを俺から引き離そうとしたら離れないように更にくっつかれた。
「やだーっ。リュウちゃんに甘えていたいーっ。リュウちゃん、他の男と違って手も出さないから安全だもんっ」
それは単に興味がないだけだ。
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