Story

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彼の家は私の一人暮らしのマンションよりお洒落なワンルーム。 その部屋で朝に目が覚めた。 目を開けると見えたのは、私を見ている下着だけの彼。 「…おはよう」 私は挨拶をしてみた。 「……誰?」 …空耳と思いたい。 昨夜の酔っ払いは酔ってる間の記憶もなくしているらしい。 ここまできたけど、やっぱりいやだって逃げようとして、私を縛ったことも記憶にないのだろう。 私の両手首は縛られたままなのに。 「…服を着たいので、これはずしてください」 私は私の手首を彼に差し出した。 彼は無言でそのロープをハサミで切ってくれる。 絶対にはずれないように縛られた。 私は自分の服を集めて着て、そのままその家を出ようとした。 「……杉浦サン?」 彼は二重人格なのだろうか。 名前もわからないと思えば、なぜか苗字で呼ぶ。 「お邪魔しました」 私はどんよりと沈み込みながら頭を下げて、その家から出ようとした。 もう二度とくることはないと思う。 もう二度と彼に会うことはないだろう。 …下腹部痛い…。 初めてなのに…思いきりされた。 家に帰ったら泣いてやる。 「……ちょっ、待った。杉浦サンだよなっ?俺、なにしたっ?」 彼は私の肩を掴んで止めてきて、私は彼を振り返る。 「…なにも」 記憶にないなら忘れられたままでいい。 私も昨夜は何もなかったと自分に言い聞かせる。 「何もないわけないっ。俺、裸だし、杉浦サンも縛られて裸だったしっ。どう考えても…」 「………何もありませんでした」 私はもう一度言った。 「あるだろっ!……した?よな…?」 「記憶にありません」 「嘘つくなよっ。記憶にないのは俺だっ」 「だから何もありませんでした。帰ります」 「……ダメ。ってか、なんで杉浦サン?どこで会った?高校卒業以来だよな?」 彼はやっぱり二重人格なのだろう。 なぜか今になって私を同級生だと理解している。 そしてなぜあなたなのか聞きたいのは私だ。 …う。お腹痛い…。 私はお腹を抱えてその場にしゃがみこむ。 「ど、どうかした?」 「奥…いっぱいされて痛い…」 私は泣きそうになりながら答えて。 彼は少し赤くなった。
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