Shan't

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晃佑が休みの晴れた休日、少し遠くの神社にデートみたいに出かけて、お参りをして。 晃佑はその建物のどこを見ているのか。 建物をひたすらじっくり眺めていた。 聞いてもたぶんわからないから聞かない。 建物の建築方式なんて語られても私には答えようがない。 今日はクリスマスという日で。 有名な神社ではあるけど、さすがにこの日には参拝客も少ない。 神社がクリスマスカラーに彩られてイルミネーションでかわいく飾られることもない。 建物をひたすら見ている晃佑をおいて、暇そうな巫女さんに声をかけて、おみくじをひかせてもらう。 もらったおみくじは大吉だった。 1ヶ月以内に私はとんでもない目に遇っているのに。 来年が大吉な1年であればいいなと思いながら、おみくじを境内の中の木の枝に結ぶ。 高いところに結ぶほど神様に近いから願いが叶いやすい…なんていう迷信を信じてみて、できるだけ高いところに。 背伸びをして結んでいると、晃佑が近くにきて、何も言わずに私の手からおみくじを受け取って、私が結ぼうとしていた枝に結んでくれた。 「もう見るのいいの?」 「あぁ。なんだろうな?あの芸術。俺には真似できる気がしない」 「晃佑も家を建てたりするんでしょ?」 「会社はそういう仕事請け負ってない。ついでに俺は鳶やってる。何も建ててないと言えば建ててない。足場なんて作業が終わればなくなるものだしな。神社仏閣なんて代表的な木造建築でしかも木組みで。寸分の違いもない同じ角度になだらかな曲線。…芸術だ。無理無理」 語られてしまったかのように思う。 私は晃佑の視線を分かち合えるように、晃佑が着目する部分を重点的に見てみる。 こんなふうに神社なんて見たことはない。 機械を使っていないのは…確かにすごいことかもしれない。 何年もかけて修繕するのだろう。 昔の人の技術を現代で駆使して。 「興味がなければおもしろくもないだろ?クリスマスらしくケーキでも食べにいくか?」 「……興味はなかったけど、晃佑と同じように見れたらいいなって思う。建築なんてまったくわからないけど。……建物造りたいとは思わないの?」 私は神社のその屋根を支える梁を眺めながら聞いてみた。 「宮大工には憧れるけど。ログハウスくらいなら造ってみたいかも」 住んでみたいかも。 ログハウス。
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