Back and forth

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「私と遊ぶ?遊ぶ?」 これはなんのからかいだとミクを見る。 今の話の繋がりからして、それはセックスの誘いにならないか? いや、そういうことにしたら、そういうわけじゃないとか言ってくれるからかい? 「おまえ、彼氏いるだろ」 「いる…けど。……リュウちゃんのえっち、気になる」 それが目的のようにはっきり言われても、今の俺にはそれはコウと比べられて最悪としか思われないもののように思ってしまう。 ひきつった愛想笑いをくれてやると、ミクは違う違うと俺の腕に彼女のように絡んでくる。 「そんなひどくないよ、きっと。リュウちゃんにそう思わせた女がひどいんだよ、きっと」 なんの検証もなく、確信もなく言われても、まったくもって慰めにはならない。 ソープで一晩だけで遊びまくって好色一代男になれば自信がつくかもしれないが。 そんなものは俺が遠慮する。 経験豊富そうなミクに相手をしてもらうのも、コウの彼女じゃなくても遠慮する。 「そこ、ふれるの禁止な?」 俺はなるべく穏便に言ってやる。 ミクは不満そうに俺を見上げてくれる。 「……だって、でも…、好きな人とするえっちは、どんなのでも幸せだよ?」 言い返したい言葉は飲み込んだ。 俺のため。 どうせ惚れられてなくて悪かったな! とは思っても。 どうしてもどうしても美優を忘れられないのは、きっと俺を…なんて甘えたように思うから。 千香は……、どうかはわからないけど。 美優に会わなければ、俺の家に連れ込むことはできていただろう。 その先はわからない。 連絡先がわかっていても、今、千香は俺には応えないし。 …過去を引きずり続けるより、愛してくれるほうを俺は選ぶ。 千香なんて俺の中から消えてしまえばいい。 「セックスしたらフラれたんだけど?」 穏便に言葉を選んで、どうして俺が禁止にしたいのか言ってやった。 「それ、本当にえっちが原因?」 なんてミクはそれは違うはずとでも言ってくれるように言った。 わかってはいる。 それが直接的な原因なんかじゃないこと。 「俺の話はもういいから。ミクの愚痴、聞いてやるよ」 「愚痴より遊んでほしい。ドライブ連れてって、リュウちゃん」 「いいけど、また下半身さわってきたら置き去りにするからな?」 車という密室空間で二人きりということに予防線を張っておく。 「……かちかち」 もちろんと言わずにそれは…。 おまえ、狙いすぎだ。
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