Back and forth

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コウの彼女にこんなふうに狙われたことは今までなかった。 元カノになってからなら、けっこうあった。 さすがにこれはコウに怒られるだろと思う。 ミクだけでなく、俺も。 あいつに殴られたら俺は一撃でダウンするかもしれない。 「下半身を狙うのはやめてもらえます?コウに浮気判定食らうぞ」 「コウちゃん、あんまり嫉妬しないし、それくらいならしてもいいのかなぁ…なんて」 「ダメだろ。おまえはコウが他の女とセックスしてもいいのか?」 そもそも、セックスをそれくらいとするのかどうか、である。 俺の場合はキスくらいとなる。 唇はなしで。 頬や額くらいで。 ただ、それも自分が惚れた相手が他の男にしていたら、自分は棚にあげていい気はしないだろう。 「絶対やだ」 ミクは嫉妬したように即答してくれて、どこかほっとした。 コウの恋愛を破壊したくない。 あのフラレ虫には運命の人ってやつが早く現れてくれればいい。 今の拾われては捨てられるような状態をこの先10年も続けたら、さすがにコウがいい加減壊れる。 今も半壊だ。 ただ、あいつが去る者を追わずに諦めるだけでもあるけど。 「嫌ならおまえも軽く他の男に差し出さない」 差し出されているのは俺なんだけど。 受け止めるつもりはない。 「リュウちゃんは別だもん」 特別。 そう聞こえるからやめていただきたい。 俺はミクになにかをしたつもりはいっさいない。 「そんっなにコウを嫉妬させたい?」 「違うの。リュウちゃんのこと、もっと知りたい。どんな恋愛してきたとか、どんな家庭環境だったとか、友達のこととか」 「そんなのコウに聞けばわかるだろ」 「リュウちゃんのことが知りたいんだってばっ。ねぇ?ずっとずっと安全なばかりの人でもないよね?下半身、使えないものになってるわけじゃないよね?」 そこ聞く?というとこを聞いてきやがる。 さすがにそれはコウは知らないはずだ。 知っていたら気持ち悪い。 「俺に興味持ちすぎだろ。彼氏のことだけ考えてやれよ。コウのことを教えてって言うなら、俺のわかる範囲で教えてやるから」 どちらかといえば子供の頃のことのほうが教えやすい。 あいつに彼女できるようになって知らないことが増えた。 まずいつまで童貞だったのかは知らない。 ファーストキスも知らない。
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