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「じゃあ、私もリュウちゃんちで一緒に寝るー」
ミクは俺の腕に両腕で抱きついてくる。
俺の家に持ち帰りたいのはこれじゃない。
もしかしたら美優とうまくつきあえていれば、今頃こんな感じだったのかもと悲しくもなってくる。
美優を俺の家に連れ込んでケダモノになりたい。
くすぐってるつもりはないけど、美優をいっぱい笑わせていちゃいちゃしたい。
あの時間が恋しい。
せめてキスしたい。
ミクはだめ。
襲われる。
コウに殴られたくはない。
「おまえは俺を安全な人物に置きすぎ」
「安全じゃなくなってもいいよ?リュウちゃんなら大歓迎」
「俺とコウの間にヒビ入れるようなことはすんな」
「……ねぇ、リュウちゃん。私、コウちゃんに不満なんかないよ?ノリが合うっていうか、一緒にいて楽しいもん。コウちゃんがまわりの人に優しいのは嫉妬しちゃうこともあるけど、コウちゃんはちゃんと私だけ彼女扱いしてくれる」
「なんのノロケ話を朝から聞かされているんですかね?せいぜいラブラブしていてください」
俺はぽんぽんと軽くミクの頭を叩くように撫でる。
「……嫉妬して?リュウちゃん」
ミクは立ち止まると俺を見上げて、そんな言葉をくれた。
俺も立ち止まってミクを見る。
俺のミクをーとも、俺のコウをーとも思ってない。
「なにに?」
「リュウちゃんに惚れられたい。リュウちゃんを落としたい」
とてもとても微妙な言葉をいただいた。
俺とコウを股がけしようとする女は初めてのことでもないかもしれないが。
「俺のなにがおまえを引き寄せるのかわからないんだけど」
「私もわかんない。コウちゃんとがんばればっかり言うし、私のこと眼中にないのわかってるのに。それでもっ。私、がんばってリュウちゃんに気に入ってもらえるような女になるから。こっち見て」
こんな告白をされたことがないように思う。
なんなんだろ、このかわいいやつと思ってしまう。
ただ、これに手を出したら修羅場しかない。
身辺整理は必要だなと、千香に言われたことを深く反省する。
ただ、ミクの場合はどれだけ真剣に話してくれても、どこかで疑ってしまう。
なにを遊ばれているんだろう?と。
「今、つきあってるやつは?放置でいいのか?」
「……そうやってまたかわす。リュウちゃん、ひどい」
「受け止めろって言われても無理だろ。二股すんな」
「……別れたら?」
また期待したように聞いてくれる。
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