Shan't

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いつもの繁華街から外に出ると、晃佑に声をかけてくる人もいなくて。 木造建築が並ぶ古い町並みを晃佑とのんびり歩く。 頭には晃佑が買ってくれたニット帽。 普通にデートでうれしくなる。 温かいコーヒーは晃佑。 私は温かいミルクティーでベンチで休憩をして。 のんびりした休日。 学校、冬休みが終わったらいかなきゃって思う。 まだ4年も大学生活は残っている。 更に言えば、大学を卒業したからといって、即一人前のお医者さんというわけにもいかない。 医大を受験したのは…医者になりたかったからだし。 かなり勉強して受かった学校をやめてしまおうとは思えない。 晃佑の家から通えればいいのにって思って。 それって晃佑に甘え続けるだけだなって思ったり。 学校にいけるようになったのなら、寄りかかっていてはいけないと思うし。 複雑だ。 このまま戻れればいいのにと願ってみて、その言葉を言えない自分に溜め息が出る。 晃佑の携帯が鳴って、晃佑は電話に出る。 隣でその会話に少し聞き耳をたてる。 電話の向こうの声、漏れて聞こえてくる。 女の子だ。 遊びに誘われている。 「今家にいないから」 『夜は?クリスマスパーティーしようよ』 「夜もダメ。デート中。また今度誘って」 『クラブのニューイヤーイベントは?』 「あー…。気が向いたら」 『つきあい悪いよ、コウっ』 「ごめん」 そんな会話。 きっと私が晃佑の家にいるから、晃佑はもっといろんなお誘いを断っていると思う。 手にしたミルクティーに口をつけて、私、晃佑の邪魔をしているなと思う。 トモのことがあって、トモが晃佑のせいだって言ったらしいから…、晃佑はここにいるんだと思うと、私はここにいてはいけないって思ったり。 ぼんやりとこれからのことを考えていると、晃佑は電話を終えたらしい。 私の被っていたニット帽に軽くふれた。 晃佑のほうを見ると、私を見てくれている。 「怒ってる?また少し電話長引いたし」 それは…、だから、つきあっていたときに私が言った我が儘のようなもの。 嫉妬もある。 かまってほしくて。 今思うと、私も勝手だった。 晃佑には晃佑のつきあいがあるって、わかったふりをしてわかっていなくて。 「遊びにいかないの?いってもいいよ?」 「…おまえとこうしてのんびりしてるほうがいい」 前も…似たようなこと言ってくれたよね。
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