Signal

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年末年始は実家で過ごして、私は私の家に帰る。 久しぶりの自分の家の床に壁を背もたれに座って、手の中の晃佑の家の鍵を見る。 晃佑の家に帰ってもいいのかわからなくて、こっちに帰ってきてしまった。 『電話くらいしろ』 かかってきた晃佑からの電話に出ると、一番最初に言われた。 気を遣われているというか、気にかけてくれている。 「もう学校始まるから、このままこっちに帰ろうかなって」 『俺の家から通えば?どうせ同じ駅だし、少しだけ俺の家のほうが駅に近いかも』 「私、晃佑の彼女じゃない」 『……もう彼女に戻れば?』 なんだろう? なぜこんなに気に入らないんだろう? 戻りたい…とは思うけど、ものすごくあっさり言われて、なんだか嫌だ。 軽い。 晃佑のこういうところは相変わらず好きじゃないみたいだ。 「……もっと真剣に口説いてよ」 『…そんな口説き方したことない』 だろうなと思う。 思うけどっ。 そんな軽い言葉で戻りますなんて言いたくない。 『……まぁ、彼女じゃなくてもいいんじゃないか?』 更にムカついた。 こっちは口説かれたいんだぁっ! …って、我が儘だなと思う。 思うけど…。 不満。 『迎えにいくから、そのまま家で待機な』 更に返事していないのに、勝手に決まってるしっ。 強引すぎる。 晃佑の家に私がいてほしいと晃佑が思ってくれているのはわかるけどっ。 なんでこの人は言葉足らずで、こんなに強引なのっ。 …わかってはいるから、うれしくはあるけど。 ものすごく複雑な気分になる。 晃佑が家のチャイムを鳴らして、私は晃佑を家にあげて晃佑の家にいく準備。 学校のことを考えると辞書なんかも必要になって、大荷物になりそう。 持って行くものは勉強道具ばかり。 「……なぁ、知花」 「なに?」 「…俺と戻るつもりない?」 私は荷物をまとめる手を止める。 …やっぱり強引なくらいがいいかも。 答える言葉が難しい。 「晃佑は?私と戻ってもいいの?」 私は晃佑を振り返る。 晃佑は床に座って、少し俯いていた。 「……また俺はおまえの意思を見れないのか?」 それは私が晃佑にフラれた言葉。 私は目を伏せて、鼓動を落ち着けさせる。 言わなきゃいけない。 今。
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