Signal

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「戻りたい。でも、まだ私は…晃佑にふれられて悲鳴をあげるかもしれない。えっちはたぶんできない」 「…俺のこと好き?」 それをシラフで聞かないでほしいと思う。 私は晃佑のほうを見ていられないくらい恥ずかしくなって俯く。 私、絶対、顔真っ赤になってる。 でも言わなきゃ。 …言えるでしょ? 砕け散ることはない。 そう思えるでしょ? 私は自分に言い聞かせる。 「…好き」 私は懸命に声を出した。 ちらっと見た晃佑の顔は、酔っているときに私に言わせたほどうれしそうでもなく。 どこか迷ったような顔を見せていて。 「……晃佑は?」 私は不安になりながら聞いた。 「知花と一緒にいるのは好きだし、戻りたいって思う。……正直に言ってみていい?」 私は頷いて、晃佑は言葉に迷った様子を見せながら、その視線をゆっくりと私に向けて。 「このピアスの元カノ、ミクにニューイヤーイベントで偶然会って、戻りたいって言われた」 晃佑は右耳にふれながら言った。 私は何をどう考えていいのかわからなくて何も言えず。 晃佑から視線を逸らすように俯いた。 嫉妬…させようとしての言葉じゃないのが、なんとなくわかる。 晃佑は…だって、ずっとあのピアスをつけていた。 何を言えるだろう? 私のほうがいいよなんて、とても言えそうにない。 その元カノと戻れば?なんて…言えない。 好きと言わせておいて、そういうのやめてってまた喧嘩になりそうなこと言いたくなる。 私の…好きの気持ち、そんなに大きく受け取ってもらえていないって…わかるから。 「…だったら…迎えに来ないでよ」 私は泣きそうになりながら晃佑に言って。 晃佑の家の鍵を床に滑らせた。 「……なぁ、知花。俺のこと好きなら、もっとおまえに引っ張れよ」 「また妬かせたいの?…晃佑は引っ張ってくれるなら、そっちに傾くって言ってない?私でも、その元カノでも、どっちでもいいって言ってない?」 私は言ってるうちに涙がこぼれて、手の甲で涙を拭った。 晃佑の好きはどこにあるんだろう? 「……ごめん。甘えた。俺んち、帰ろう?」 晃佑は私のそばにきて、私の頭にふれる。 私がもっと自分に自信があれば…、いくらでも晃佑に私を好きになれって言えるけど。 そんな自信、あるわけない。
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