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晃佑の頬にふれた手で、私はその頬を摘まんだ。
置いていかれる子犬みたいな顔してくれて…憎たらしい。
「泣いて」
「……これ以上、おまえに醜態晒したくないのにっ」
「お願い」
「そんな願いはきいてやりたくねぇよっ!」
言ってる晃佑の目元に涙が浮かんで。
私は晃佑が私にしてくれたように、指先でその雫を拭う。
かわいい。
私は笑った。
「友達ならなれるかな?電話、またして?寂しかったら呼び出して。行くから」
「……おまえもそれ言うの?……なんで、俺だけの女になってくれない?」
晃佑の目から堪えきれなくなったかのように、次々と雫がこぼれて。
私は少し慌てて、鞄をそこに落として、両手で晃佑のその頬を拭う。
晃佑は私の腕を掴んだまま、その場に崩れるように座って、私は晃佑のそばにしゃがんで、その頭を包むように抱きしめた。
「……また醜態晒してる。最悪」
「…泣かなくても、私の心は晃佑だけのものだよ。晃佑以上に好きになれる人なんて、きっと見つけられない。私は晃佑が思うより、きっと晃佑のこと大好きだよ。
でもね、晃佑はそんなんじゃないでしょ?」
「……俺の気持ちが軽いって言ってる?」
慰めているつもりだったけど。
この子供のような人にまた少しムカついた。
「…軽くないって言うなら、他の女に揺れんな、ボケ」
晃佑の口の悪さがうつってしまったようだ。
私は思わずそう言っていた。
晃佑の手が私の腕を強く掴む。
「おまえな…、どっちなんだよっ?ひくのか押すのか、はっきりしやがれっ」
「押されたら倒れるってすごくムカつく」
「俺がおまえを押してるんだから倒れて当たり前だろっ。……ちょっと待て。なんで口喧嘩になってきた?」
「晃佑がまったく自分のことわかってないからじゃない?」
言ったら、私は晃佑から少し引き離されて。
晃佑は膨れっ面で私を見る。
「……わかった。俺が引き気味におまえに甘えるとこうなるってよくわかった。……おまえは俺の女でいろ。強制」
強引すぎる…。
「…元カノと戻るか迷ってるくせにっ」
「迷ってる。おまえの言うとおり、おまえにミクを求めていたのもわかった。ミクの態度に惚れていたのもわかった」
…この人を殴ってもいいだろうか?
本気で思った。
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