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私は拳を握り、晃佑の胸に押し当てる。
「ミクさんと戻れば?」
晃佑を睨むように見て言ってやった。
「嫌だ。俺はおまえがいい。おまえの素直じゃないところがいい」
ひどいっ!
私は本気で晃佑に殴りかかろうとして、晃佑は私の両手首を掴んで止める。
「怒るなよっ。…おまえの外見、俺の理想なの。その中身のどこがいいのか言ったらそうなった」
「誉めてないっ。まったく誉めてないっ」
「……Mっぽいとこ?」
「誉めてない、誉めてない、誉めてないっ。無理に言わなくていいっ」
「…あ。これなら怒らない気がする」
「聞きたくない」
晃佑の口からは私の外見しか誉める言葉は出ないとよくわかった。
「俺に惚れてくれているところ」
それを言われると、今度は泣きそうになった。
届いた…から。
私の気持ち。
「泣き虫なのもけっこう好きだし、しがみつくように抱きつかれるの好きだし…。おまえが作ってくれる料理も好きだし、笑ったらかわいいし。
……これくらい言ってもダメ?」
「…ダメ」
「…おまえな…。……なんで俺に惚れてるくせに、そうなるわけ?おまえがいいってどれだけ言えば伝わる?どう口説けば納得する?」
納得…するかはわからないけど。
言われたい言葉はある。
「……酔ってる晃佑に言ってもらう」
「最近、記憶なくすほど飲んでないし。…言って?言ってやるから」
私はこんな晃佑に弱いかもしれない。
嫌なとこ、いっぱいあるし。
不安とかもいっぱいあるけど。
それでも好き。
「……好きって言って。私だけって言って」
思い切っておねだりしたら、晃佑は笑った。
うれしそうに笑いやがる。
……すごく好き。
「好き。知花だけ。
……恥ずかしいな、これ。もう言わない」
「もっと言ってくれないと帰る」
「おまえは俺を虐めるのが好きだろっ?」
かもしれない。
とは答えられない。
晃佑のその反応が好き。
じっと晃佑を見ると、晃佑はちょっと赤くなって、私の目をその手のひらで隠す。
「…好き。こんなどうしようもない俺だけど、もう一回つきあおう?」
ちょっと真面目に真剣に言ってくれた気がする。
私は思わず笑顔になって頷いた。
そんな私の唇、晃佑にキスをされて。
私はその唇を求めるように、顎をあげて晃佑の唇に自分の唇を押し当てる。
もっと口説いていて。
押し倒されるくらいがいい。
晃佑限定。
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