Story

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私は彼の家の玄関先に座り込んで、泣きたくなる体の痛みを堪える。 あれはただの強姦だ。 早くここから出て忘れてしまいたい。 私は彼と友達でもない。 昨日、約2年ぶりに会った、言葉をかわしたこともない人。 「……とりあえず部屋の中戻ろう。…というか、俺、中で出してないよな?」 彼は私の腕を掴んで、部屋のほうへと引っ張りながら、それがこわいとでも言いたげに言ってくれる。 私は昨夜の私の体を押さえつけて虐める彼のその姿を、その顔を思い出す。 …早くここから出ないと。 何もなかった。 昨日は何もなかった。 私は私の腕を掴む彼の手にふれて、私から離れさせる。 「避妊していたので大丈夫です」 私は答えて立ち上がり、そこにあった玄関の扉を開ける。 彼は私の後ろから腕をのばして、その扉を閉めた。 「逃げるなよっ。まだ聞きたいことあるんだって」 「私は何もしていませんっ」 私は尋問される容疑者のように答えた。 というか服を着てほしい。 ぱんつ1枚でうろつかないでほしい。 なんて思っていたら、私は昨夜のように片腕で彼に抱き寄せられた。 「誰も責めてもいないっ。…俺が責められるんじゃないのか?記憶ないし。なんかSMっぽいことしたみたいだし」 恨むほど覚えていたくもないから、さっさと帰ってしまいたい。 私は彼の腕から逃れようと、彼の腕を離れさせようとした。 行動パターンは酔っていても、酔っていなくても同じなのかもしれない。 まだ酔っているのかもしれない。 私は…ふれられたくない。 「帰ります」 「…いや。…会話になってないし。杉浦サンの携帯番号教えて?メアドと。俺のも教えておくから」 この人はいったいなんなんだろう。 なぜ私はここにいるのだろう? 「…髪、いい匂い。綺麗な髪」 彼は私の体を抱き寄せたまま、酔っているときと同じように私の頭に顔を擦りつけてきた。 …髪を切ってしまおうか。 「なんか言えよ。……なぁ?つきあおっか?」 彼はものすごく軽く言った。 体を重ねた記憶もないくせに。 意味不明。 そしてそんな言葉を私は誰にも言われたことがない。
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