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「かたい…。泣いてるときはおとなしくキスされて慰められてくれるほうがかわいいのに」
「加藤くんにキスされたくない」
「かたっ。がっちがち。けど…、俺としては話を聞いてやったくらいで一夜を渡す女より、それくらいカタイ女に惚れられたいけど?俺しか見ていないって思えるから。というわけでトモちゃんのお願いは却下。メイクなおして席戻って」
却下された。
ミクの背中を押しているなら却下しなくてもいいはずなのに。
それに…、こんなふうに晃佑のことをよくわかっている人に話を聞きたい気持ちは私もわかる気がする。
本人に聞けないから、他の誰かの言葉が欲しい。
ミクは加藤くんに奪われたと思う。
そして奪った加藤くんはそういうつもりもなくて、ミクをもう一度晃佑に戻そうとしているんだと思う。
だって…私もどきどきしてしまったもん。
「あ。メールも電話も気軽にしてくれていいから。俺、彼女いないし。というかつくる気もないし」
「モテないことはないでしょ?」
「コウの彼女になった女としか親しくしないからわからない」
「……晃佑の保護者?」
聞いてみると加藤くんはおもしろそうに笑う。
「単にコウに彼女を持っていかれたくないだけ。あいつ、男前だから。目移りしやがるの、俺の彼女になった女。だから俺の平穏な恋愛はあいつがフラれ虫卒業するまで無理」
「……そうやって女の子振っていそう」
私は図星をついてしまったらしい。
加藤くんの笑顔が消えた。
「……ねぇ、トモちゃん。コウにまた振られたら俺とつきあってみない?俺、意外とトモちゃんと相性いいと思うんだ。長く平穏な恋愛、トモちゃんとならできそう」
私はたぶん赤くなった。
告白みたいなことは加藤くんが2人めだ。
そして、そうだねって頷いてしまいそうな自分がいるから困る。
たぶん相性いいと思う。
喧嘩もなさそう。
私の言葉の端々をちゃんと聞き取ってくれる気がする。
「戻るっ」
私はまともに返事もできずにトイレに逃げ込んだ。
どきどきしている。
あんなふうに…晃佑が言ってくれたら、本気で喜びそう。
言ってくれないけど。
外見、かっこいいし。
中身も優しいけど。
察しがいいわけでもない。
自己中で我が儘な甘えたになるときもある。
強引すぎるくらい強引。
加藤くんと足して2で割ってくれたらちょうどよさそうだ。
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