Some time

2/13
前へ
/606ページ
次へ
早生まれの私も、とうとう20になった。 桜の蕾が膨らむ季節。 早咲きの桜を晃佑と見に行って、のんびりデート。 繁華街のほうではあまりデートをしていない。 晃佑が誰かに声をかけられるから。 若者がくるような場所じゃないと思うようなところを、のんびりと歩くデートが多いかもしれない。 私が…晃佑の知り合いを嫌がってしまうからなんだけど。 トモが私にくれた傷。 晃佑の知り合いは派手な人が多いから、そういう人を苦手としてしまっている。 少しは伸びた髪。 軽く色を抜いて春らしい色を入れた。 かわいくて気に入っているのだけど、学校では少し浮いてしまう。 院内研修なんてものがあった日には、即、黒染めしないと怒られる。 茶髪の医者がいてもいいと思うのだけど。 したら怒られる。 今は春休みだから自由。 もう春だなという陽気の中、晃佑はあくびを一つすると、私の膝を枕にベンチの上で横になる。 長い足は片足が曲げられてベンチの上に乗り、もう片足は地面についている。 黒髪に青を重ねただけの、目立たないけど光に当たると青く見える髪。 その髪にふれて軽く弄ぶ。 晃佑は目を閉じて、私に甘えるかのように膝にすりすりしてくる。 「気持ちいい…。彼女の膝枕って憧れてたんだよなぁ」 「元カノたくさんいるのにしたことないの?」 「だからっ。知花にはよくわからないかもしれないけど、それだけの数にフラれてんの。普通に情けなくて泣ける話をしないでくれっ」 晃佑はその目を開けて、私を見上げて怒るというより拗ねたような顔を見せる。 …かわいい。 泣けばいいのに。 私は晃佑の頬をぷにぷに摘まむ。 「なんでフラれるかわかる?」 「……それだけの人数がいればその時々で違う。ただ言われる言葉は同じ。最初からその程度の気持ちで、最後までその程度の気持ちしか抱けない男なんだと自分を理解している。 いいんだけど。……つきあうって意味ないって思ってた。何も変わらない。ただ少しの特別があるだけ。なら、その特別が見られればいい。 俺を好きなように独占して、彼女だとまわりに見せて。 そういう恋愛ごっこ。 けど、そんなごっこ遊びでも、その時間だけは俺だけのもの。すぐ……いなくなるけど」
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加