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傷つけられて。
傷ついて。
傷つけて。
もっと楽しくいつも笑っていたいのに、どうしてこんなことになるんだろう。
思うとおりにうまくいかない日々に溜め息と涙がこぼれる。
すれ違えばすれ違うほど寂しくなって、同じ気持ちでいたいと合わせるようにがんばって。
でも、相手が常に本心を見せてくれているとは限らないし、がんばってみたものが相手の不快になってしまうこともある。
恋愛ごっこってなんだろう?
恋愛ってなんだろう?
ただ好きなだけじゃダメなの?
焦がれる想いは恋愛じゃないの?
わからないことすべて聞ければいいのに、肝心なこと何も聞かずに他愛のない会話で時間が過ぎる。
晃佑と高校以来に再会して1年目がくる。
私はきっと何も変わっていない。
「4ヶ月つきあったの初めてかもしれない」
晃佑は不意に思い出したかのように口にした。
いつものように一緒に食事の支度途中。
「初めて記念にその右耳にピアス買ってあげようか?」
私は水に濡れたままの指先で、何もつけられていない晃佑の右耳にふれる。
前に晃佑がピアスを投げたときは、私が拾ってアクセサリーの詰まった箱に入れておいた。
しばらくしたらそのピアスは晃佑の右耳に戻っていたのだけど。
この前投げられたのは、さすがに拾えなかった。
探そうとしたら、いこって言われて、手を引っ張られて。
あの公園にもう一回いって探してみようと思いつつ、時間もなくて探せていない。
晃佑は捨てた…のだろうけど。
気にしてしまう私がいる。
「他にピアス持ってるけどつけていないだけだって。知花もピアスつける?穴あけてやろうか?一緒のピアスつけたりしてみる?」
ペアルック的な何かにも思える。
微妙に恥ずかしいかもしれない。
でも…。
「あけて?両耳のほうがいいのかな?3つくらいあけちゃう?」
ピアスしてみたい。
アクセサリー、あんまりつけないけど。
イヤリングは落としてしまいそうだから、ピアスいいな。
「同じ位置に1つずつ。左の軟骨あたりに1つやるとかわいいかも。医者目指してるのにいいのか?」
「それ、なんにも関係ない。ピアスあけたから医者になれないっていう話は聞いたことない」
「んー、じゃあ、食べ終わったら」
私はうれしくて笑顔でうんうん頷く。
けど。
あけたときのその痛みにやめておけばよかったと思う。
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