Some time

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「酔ってるの?」 「ちょっとだけ」 とは言うけれど、晃佑は私をぎゅうっと抱きしめてきて、私の髪に擦り寄る。 酔っ払い晃佑だ。 かなり久しぶりに見るけど、記憶をなくす晃佑だ。 じっとその顔を見ると、私の顔のいたるところにキスをくれて、その口許は笑ってる。 「好きって言って?」 「好き」 言うと、それ以上の幸せはないってくらいの笑顔を見せてくれちゃう。 ものすごく好き。 「外、出るの面倒じゃなかったら、ご飯買いにいくの一緒にいこ?」 誘ってみると、晃佑は何も言わずに私の手をひいて玄関に引き返す。 いってくれるらしい。 ぎゅって甘えるように手を握ると、指を絡めて握りなおしてくれる。 ずっと酔っ払い晃佑でいいかもしれないと思ってしまう。 コンビニで買い物をして家に帰って。 私がサラダを食べていると、晃佑はそばに座って、じーっと私の顔を眺めてくる。 「食べたい?」 「知花が食べたい。早く食べ終わらないか待ってる」 喧嘩していたはずなのに、酔っ払いになると不思議だ。 「怒ってないの?ピアス拾ってきたこと」 「ピアス?」 「赤いピアス」 「怒ってない。けど、いらない。次拾ってきたら乳首にピアスつけてやる」 い、痛そう…。 なんか本気の脅しに思える。 サディスト。 酔っ払い晃佑でよかったと思う。 朝には忘れてくれている。 「…食べるの遅い。あーん」 晃佑は私の手からフォークをとって、私の口に入れてくる。 それをあーんって食べると、すぐ次のを出してくる。 早食いをさせられそうだ。 「早く。知花。知花の飯、俺が食べるぞ?」 晃佑はフォークに刺していたサラダを食べる。 ……したいためなのだとはわかる。 欲望なのだとはわかる。 ……でもかわいい。 この自己中をかわいいと思ってしまうなんて、私はもう末期かもしれない。 晃佑は私のご飯であるはずのサラダを次々食べていってしまう。 「……私の」 「卵かけご飯作ってあげる」 どこかで聞いた。 いつか手料理作ってっておねだりしたら、酔ってない晃佑が作ってくれるって言ったものだ。 私はそれを思い出して笑う。 「酔っ払い晃佑としたら、酔ってない晃佑に怒られること思い出した」 「なにそれ?俺、二重人格じゃないし」 「でも今話していること、朝には忘れるでしょ?」 「…だったような気がするけど、知花としたいっ」 「なんで?」
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