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「すげー好き。その笑った顔かわいい」
なんてことを思いきり笑顔で言われて、私は赤くなる。
おねだりしていないときに言われると、なぜこんなにうれしいのだろう?
酔っ払い晃佑好き…。
今なら…聞けるかな?
「ねぇ、晃佑。ミクのことは?」
聞くと、酔っ払い晃佑のはずなのに、その顔から笑顔は消えて、その目は過去を見るかのように寂しそうに揺れる。
それを見ただけで、やっぱりただの元カノじゃないって思える。
「……俺、知花とつきあってるよな?まだミクが彼女だったっけ?」
「…彼女は私だよ?」
「だよな。……ミク…」
「どう思ってるの?」
聞いたら、私の体はその場に倒された。
少し驚いて晃佑を見上げる。
「知花が彼女。それでいいだろ?」
酔っていてもそこにはふれられたくないらしい。
私は晃佑の頭の後ろに手を当てて、その顔を引き寄せてキスをした。
私が彼女。
晃佑はそれでいいらしい。
晃佑の唇は私を求めるように私の唇を食べる。
晃佑の髪に指を絡ませて撫でて、私はそのキスを目を閉じて受け止める。
と、私の頬に雫が落ちてきて。
目を開けると、晃佑は私をまっすぐに見ながら泣いていた。
私はその頬にふれて、指先で晃佑の涙を拭う。
「……私は…好きだよ?」
言っても晃佑がうれしそうに笑ってくれることはなくて。
「……ミクさんが好き?」
晃佑は何も答えずに、私の隣に崩れ落ちるようにして泣いた。
私は……好き。
涙がどんどんこぼれてきて。
服の袖で拭っても拭ってもこぼれて。
晃佑から離れようとしたら、私はその腕に強く抱きしめられた。
「……大丈夫。なんでもないから。離して」
「……彼女はおまえだけだから」
私は何かを答えようとして、でも何も答えられずに、その腕から逃げようとした。
「ダメ。…行かないで。知花、嫌わないで」
晃佑は私を震えながら抱きしめて泣いた。
晃佑にとって一番つらかったことはミクとの別れ。
言わなくても…わかってしまうものなのかもしれない。
何も…聞かなかったことにしようか。
晃佑は朝には忘れている。
私が聞いたんだ。
晃佑はなにも悪くない。
彼女は私だけでいてくれた。
ただ、ずっとミクが忘れられず、好きだっただけ。
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