Sweet lies

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そんな晃佑を止めてくれたのは加藤くんで。 音が聞こえるくらいに晃佑のお尻を蹴ったようだ。 晃佑は加藤くんを睨むように振り返って、その場で無言で蹴り合う。 じゃれているように見えるけど、当たったら痛そうな蹴り合いだ。 「さっさと帰れ。酔っ払い」 「客に帰れ言うな、店員」 「おまえみたいな客は迷惑だ」 「暇な店で迷惑とか言ってんじゃねぇ」 なんて言い合っているけど。 二人の蹴り合いが迷惑だ。 疲れたのか飽きたのか、蹴り合いは当たることなく終わり、晃佑はバーカウンター席で飲む。 加藤くんはイラついた様子を見せながら、晃佑に酒を出す。 「帰れ。迎えはきているだろ」 「あ。知花、飯。なに食う?ここ座って」 晃佑は思い出したように言って、私の肩を抱いて隣に座らせる。 私は加藤くんに視線を移して。 晃佑が出してくるメニューを見る。 「トモちゃん?連れて帰ってくれるためにきたんだよな?」 「……シーザーサラダ1つ。あとカシスオレンジ1つ」 「…おまえら、迷惑カップルだ」 なんて加藤くんは言うけど、ちゃんと働いてくれる。 晃佑に肩を抱かれて、晃佑の肩に軽く頭を預けて、サラダとカクテルを待つ。 「…ピアス、嫌い?」 晃佑は私の耳たぶにふれて、どこか寂しそうに聞いた。 変なところを気にしちゃう酔っ払い晃佑になった気がする。 「アクアマリンの、かわいいのあげたのに」 「青系のやつ、私につけたがるよね」 話を逸らすように言ったら、耳を引っ張られた。 不満顔。 「ピンク色の石ならつけてあげる」 「…ダメ。俺の好きな色にするの。知花は俺のだから」 「玩具?」 「……彼女。泣き虫で寂しがり屋で笑顔がかわいい彼女」 「晃佑も泣き虫で寂しがり屋で…、笑顔が一番かっこいい」 「俺を愛してくれるかわいい彼女」 届いてる?私の気持ち。 ……でも、きっと重すぎた。 捨てられないくらい重すぎた。 言ってないのに…届きすぎた。 「……晃佑も私を愛して」 「愛してる。おまえだけ見てる」 うん。見てくれてる。 残った気持ちを消すように。
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