Sweet lies

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消さなくてもいいものだと思う。 ミクの気持ちは晃佑を振り返ったのだから。 月日が過ぎて、ミクはまた晃佑から気持ちが離れてしまうかもしれない。 晃佑がミクを許せたのなら…、泣かなくてもいいのに。 ミクは晃佑からの連絡に喜ぶくらいの気持ちはあるんでしょ? 私が…いるから…。 戻れない。今は。 晃佑から私を捨てたりはしない。 そういう人だから。 このつきあいは私のただの自己満足なのだろう。 私からミクを許して、ミクとやり直してなんて…言いたくない。 「トモちゃん、もっと食べないと栄養偏るよ?他にも何か作ろうか?」 加藤くんが出してくれたサラダを食べていると、そんなふうに声をかけられて、私は迷う。 食べたいと思うときでも、バイトが終わるのが遅い時間で。 お腹まわりに脂肪つきそうで食べていないっていうのもある。 「太る」 「知花は太ってもかわいい」 なんていう晃佑の手は私の胸にふれてこようとして、私は慌ててその手を握って止める。 加藤くんの前だとなんでもしていいと思っているらしい。 「……おまえ、今、俺の目の前で何しようとした?あ?」 加藤くんには気がつかれていて、キレ気味に晃佑に言う。 「これは俺の。おまえとるから見せつけておかないと」 晃佑は私を抱き寄せて、両腕でくるむ。 私の頭に顔をすりすりしてくる。 椅子から落ちるっ。 「おまえな…。どうでもいいけどトモちゃんに甘えすぎだろ。他の女にはそうでもないのに、なんでそこまで甘えてんの?」 「甘えてないって。俺が甘えたらぐったぐたになるから甘えてない」 甘えてる。 私は思う。 「甘えてる」 加藤くんとは気が合うようだ。 ……乗り換えようかな。 そういう気持ちはないけど、加藤くんならわかってくれそうな気もする。 けれど加藤くんは私の背中を押しているから、私を受け入れることはないだろう。 わかってはくれるけど、受け入れない。 …いいかも。 受け入れてほしいわけじゃない。 「奪われてみたい」 私は加藤くんを見て言って、加藤くんは驚いた顔を見せて。 晃佑は私の頬をつねった。 痛い。 「おまえ、最悪。俺の目の前で他の男にアピんな。ボケ」 晃佑は私の頬をつねったまま、私の顔を晃佑のほうに向けさせて。 私の口を鼻をつねってくれて。 痛い…。
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