Sweet lies

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「おまえが他の男に乗り替えたら、おまえ殺す」 晃佑の手は私の首にふれて、そのまま気管を押さえてくれて。 私は呼吸ができずに、私の首にふれる晃佑の手にもがくように手を当てる。 「くる…し…っ。死んじゃう…」 「……いい声。トイレいく?思いきり犯してあげる」 なんて言った晃佑の手は加藤くんに叩き落とされた。 私は肺に入る空気に小さく咳き込んで、晃佑が抱き寄せるから、その胸に額を当てて呼吸を整える。 「…ちょっと待て。なにかものすごく狂った世界を見た気がする。…コウ、おまえ、もう本気でトモちゃんに甘えるのやめとけ」 「甘えてない。知花に甘えさせてんの。俺がいないと生きられないってくらいになってもらう。依存するなら共依存」 晃佑は私の頭を髪をぐしゃぐしゃにするくらい撫で回す。 「……酔っ払いのおまえに何を言っても無駄なのを忘れていた。ある程度本音語ってくれるから話しやすくはあるけど」 加藤くんはそこまで言って、扉口の開く音に仕事へと戻っていく。 「…私がいなくなると寂しいの?」 晃佑の胸に額を当てたまま聞いてみた。 「…寂しい。長い黒髪好き」 「髪、短いよ」 「…俺のせいだから。俺が一生面倒みる」 それも…、晃佑を縛る一つの理由のようだ。 私は思わず泣いてしまって。 「泣いてる?」 「……プロポーズみたいで…うれしかったから」 私は泣きながら、懸命にそう答えた。 嘘をついた。 「結婚しよっか?」 「うん…。ウェディングドレス着たいな。晃佑の建てたログハウスで暮らしたい」 「建ててあげる。場所は?」 「…深い森の中。晃佑と二人だけでいられるところ」 「わかった。約束する」 朝には忘れているくせに。 私の嘘も忘れてくれる。 私は晃佑の服をぎゅっと掴む。 ごめんなさい。 あなたから離れたくないのは私で。 あなたに甘えているのは私。 依存しているのは私。 あなたが優しくしてみせてくれるから。 あなたが私だけを見ているから。 大好き。 あなたを殺してその心が手に入ればいいのに。 ねぇ?私に青い色を渡すのは、深紅と重ねないようにしているんでしょ? それでも…重ねているんだよね。 私は彼女のかわりにここにいる。
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