Sweet lies

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初めて飲んだお酒は甘くてジュースみたいで。 晃佑みたいにすべての記憶を消してしまおうと、どんどん飲んだら途中から意識がなくなった。 ぼんやりとところどころは覚えている。 目が覚めると加藤くんの家。 晃佑共々連れて帰ってくれた。 面倒見のいい人だ。 そして記憶をまったくなくせるのは、晃佑の特技のような気がする。 眩しい光に目を擦り、いつもと違うにおいのするベッドに顔を擦りつけて。 眠いけど起きなきゃとしていたら、私の隣に転がっていた晃佑の腕が私の体に回って、抱き枕のようにいつものように抱きしめてくる。 甘えてる。 かわいいって…今思えないのはなぜだろう? 晃佑の体を引き離して、ベッドの上で体を起こして、部屋の中に主の姿を探す。 加藤くんはパソコンの前に座ってゲームをしていた。 「おはよ。ごめん。眠ってない?」 その背中に声をかけると加藤くんは振り返ってくれる。 「寝ようとしたら、そこにいる自己中男にベッドから蹴り出された」 「……ごめん」 「トモちゃんに謝られると、ちゃんとつきあってんだなと思えていいかも。もう5ヶ月?半年?」 「5ヶ月。……彼女できた?」 「それがブランクあくと、どうつきあい始めていたのかもわからず…。なんか飲む?牛乳、オレンジジュース、ウーロン茶ってところはあるけど」 加藤くんは立ち上がって、部屋の中にあった小さな冷蔵庫を開ける。 「オレンジジュース飲みたい」 「昨日、どんだけカシオレばっか飲んでいたと思っている?それでまたオレンジか」 なんて言いながら、オレンジジュースをグラスに注いでくれて。 私はベッドからおりようとして、晃佑に腰に腕を回されて引き留められた。 振り返ると晃佑はまだ眠っている。 眠っている…けど、半分起きて寝ぼけている。 私の体に頭を擦り寄せて、定位置のように膝を枕にして。 私は晃佑の髪をちょっと引っ張ってみる。 起きない。 頬を摘まんでみる。 起きない。 ……オレンジジュース…。 喉渇いた…。 膝を揺らすと、おとなしくしろと言わんばかりに唸って、更にぎゅって抱きつかれた。 「……どんな飼育してそうなった?」 加藤くんは私の近くにきて、グラスを手渡してくれた。 「なんにもしてない。…でも会ったときから甘えていたかも」 私は去年の今頃を思い出しながら答える。
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