Sweet lies

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「晃佑、起きて」 って、私は話を逸らすために晃佑を起こす。 「……いや」 晃佑はいつからか起きていたようで、そうはっきり答えて。 どこまで聞かれたかわからないけど、…それでいいと思えた。 私が別れを匂わせればいい。 晃佑を傷つけることになるかもしれないけど、手放すための前段階がつくれる。 あなたのためにだなんて言いたくもない。 嫌われることをして…嫌ってもらうほうがいい。 「起きていたのか。俺の前で女といちゃつくな」 「シラフじゃなけりゃ、おまえの前で知花は俺のだとセックス見せつけてやるところなのに」 それは私がいやだ。 本気でいやだ。 「おまえのほうがモテまくりのくせに俺に妬くな。しかも俺が手をつけたのはミクだけ。あとはキスもしていない」 「手をつけておきながら振るから…」 「悪いな。俺はその場だけの浮気で終わるつもりだった。尻が軽いのは興味ない」 加藤くんがさらっと答えると、晃佑はその答えが思いきり気にくわなかったらしく。 起き上がったと思ったら蹴りかかっていっていた。 また蹴り合いしている。 当たればいいのに、どっちも当たらない。 避けてかわして受け止めて。 しかも足しか使わない。 狭い部屋で非常に迷惑だ。 私が被害に遭いそうだ。 私はオレンジジュースを飲みながら部屋の隅に移動して、飽きるか疲れるのを待つ。 なんで言い合いになるのに一緒にいるのかがわからない。 ストレス発散をお互いにしているようにも見える。 と思っていたら、晃佑の足が加藤くんの脛に入って。 加藤くんは痛そうにしながら、もういいと言いたげに蹴り合いをやめた。 「寝不足。寝る。勝手に帰れ」 加藤くんはベッドの上に倒れ込む。 「…知花なら…つきあうのか?」 晃佑は加藤くんを見下ろして聞いた。 「それってトモちゃん疑ってるのか?」 加藤くんは晃佑を見上げて聞き返して、晃佑の視線は私を見る。 ……加藤くんを利用しないであげるほうがよさそうだ。 加藤くんだけじゃないと思わせないといけない。 「帰ろ?知花」 晃佑は私に手を差し出してきて、私はその手にふれて立ち上がる。 手にしていたグラスを机の上において、加藤くんの視線に加藤くんを見て。 何か気がつかれてしまっていると思いながらも、お邪魔しましたと声だけかけて、晃佑と手を繋いで帰る。
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