Dainty girl

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「もうちょっとくらい待てよ、おまえは。…飲みにでもいく?」 明らかに帰ろうとしていたのはわかる。 自分で決めておきながら待ち合わせに少し遅刻してしまったのは俺だ。 とはいっても30分も過ぎていないはずだ。 それで帰ろうとしているなんて…、チカはそんなに会いたくなかったって思わせられて少し凹む。 けど捕まえた。 背中は覚えていてよかった。 「私、まだ19です」 誕生日はまだらしい。 俺は4月生まれだから紛れもなく二十歳。 というか、19くらいで年齢気にして飲まないのもめずらしい気がする。 俺のまわりが普通じゃないのかもしれないけど。 「今日が誕生日にしておけば?飯食った?」 「…まだ」 よしよし。飯はまだのまま。 俺はどこならチカでも寛げそうか考えて。 「じゃあ居酒屋で。給料前だから割り勘な」 思い当たったところに連れていこうと、その腕から手に握りなおして歩き出す。 少しだけチカを引っ張るように。 やっぱりやめた、帰ると言われる前に行動。 じゃないと、チカは本気で逃げるから。 斜め後ろくらいを歩いてくれるから、俺はチカを時々振り返る。 隣を歩いてくれたらいいのにと思ったりしながらも、俺を見上げるその視線に、どこかうれし恥ずかし気分。 ここにいる。 俺の手はその手にふれている。 個室ではないけれど、間仕切りの高い居酒屋にチカを案内して。 チカに好きなものを注文してもらって、俺は酒を注文。 これってチカとの初デートになるよなと思って、割り勘にするのもなぁと思う。 連れなだけなら割り勘でいいけど、狙ってる女に払わせるのはかなり微妙だ。 気前のいいとこ見せて、それ目当てでもいいから振り返らせたいとも思う。 俺の前でチカは運ばれてきた食事に手をつける。 その顔をじーっと見ていた。 また会えない期間が長くなっても忘れないように。 というか、美人だ。 寝ているのを眺めたのは別として、真っ正面からこんなふうに見たことがない気がする。 チカの視線は俺の視線に気がついたかのように、ちらっと俺を見て逸らされる。 ……かわいい。 メガネかけているのもよかったなと高校生のチカの姿を思い出す。
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