18835人が本棚に入れています
本棚に追加
「…やだ!」
「コト?」
あたしはキッと強く、知らない男を睨みつけた。
驚いた顔をしている男に、大きな声で叫んでやる。
「アンタなんか、認めない! あの部屋にいていいのはっ! あの部屋はっ…!」
じわり、涙が滲んできた。
あたしはそれをぐっと堪えて、前に立つイチとかいう男を見据える。
アンタじゃ、ない。
あの部屋に帰って来てほしいのは、アンタなんかじゃ、ない。
あの部屋に、いてほしいのは。
『…コトリ。ほら、おいで』
変わらない、包み込むようなやさしい笑顔があたしを呼んでる。
あたしの大切な、大好きな、たった一人のヒト。
.
最初のコメントを投稿しよう!