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知らない男を睨みつけたままのあたしに、キクちゃんはそっと溜息を吐いた。
「コト、いい? アタシはね、アンタのために、新しい人を迎えることにしたの」
「…あたしの、ため?」
「そうよ」
そう言ったキクちゃんが、あたしに詰め寄る。
高いところから見下ろされて、少しだけ、後ずさりしてしまった。
キクちゃんは目を細めて、言う。
「アンタ…いつまでもヒカリに捕われてどうするつもり?」
その一言に、あたしの理性は吹っ飛んだ。
「捕われてなんかない! ヒカリは、ヒカリはあたしの…!」
「アンタがヒカリのことを大切に思ってたのは知ってる。でももうそろそろ次に進んでも良い頃でしょう?」
「次って何!? あたしに必要なのは、ヒカリだけなのに!」
「そう、アンタにはヒカリが必要だった。それは間違いじゃないわ」
はあ、と。
キクちゃんの溜息が、あたしの頭上で消えていく。
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