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朝7時半。
いつも通り、あたしは冷蔵庫を開けた。
ない。
1杯分残してた、牛乳が。
あたしは振り返り、ダイニングテーブルで新聞を読んでる彼女に声をかける。
「キクちゃあん、あたしの牛乳どこやったー!?」
「えー? 知らないわよ?」
ばさり、新聞を手元に落としてあたしの方を向いた彼女。
端正な顔立ちだけど、その手は骨っぽくて、ごつい。
おかしいなー、と呟いたあたしの前を、甘い香水の匂いが通り過ぎる。
「あ、ごめんそれ私ー。どーしてもカフェオレにしたくってさー」
さらりと言って、花の香りを漂わせた主は洗面所へと向かう。
あたしは慌ててその背中を追う。
「ミハル!? アンタまたっ! どーして人のモン飲み食いしちゃうわけ!?」
「うっさいなー。買ってくりゃいいんでしょ、帰りに買って帰るわよー」
「後じゃ意味ないっ! いま! あたしはいま牛乳が飲みたいんだよぉっ!」
「あーもう、うるさいうるさい」
「ミハルぅっ!」
軽やかな足取りであたしから逃げるミハルを追いかける。
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