コトリとイチの未来と光

11/30
前へ
/550ページ
次へ
  「……や、だ……」 心の中に、ぽつんと浮かんだ言葉が、口からこぼれ落ちた。 窓に向かっているイチの姿は、ほとんど影になっていた。 重なるのはあの幻のような時間の中で、光に包まれて、消えていく……ヒカリの姿。 「……いやだよ、イチ……っ!」 遠い。届かない。 このままじゃ、また、失ってしまう。 突き動かされるように、あたしは立ち上がっていた。 勢いのまま、影に手を伸ばす。 「……っ、あたしはっ、忘れるなんて、できないっ……!」 ぎゅうっと握ったそれには、感触があった。 しっかりした布の手ざわり。 確かに掴んでいる、イチの、白衣。 もう絶対に離したくない、大切なひとの、とっかかり。 .
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18835人が本棚に入れています
本棚に追加