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「……どうして……」
弱々しい声が、聞こえたと思ったら。
あたしが抱きしめている体は、小さく震え出していた。
「……イチ……?」
不安になって、呼びかける。
けれどそれに返事はなかった。
代わりに、嗚咽のような呟きが届く。
「……どうして、きみは……っ、いつも……っ!」
そう、聞き取れたと同時。
くるりと身を翻したイチは、あたしをその腕の中に閉じ込めた。
「っ……!?」
顔を見る隙も、ないくらい。
急いたその動きが、あたしの声を奪っていく。
でも、何も、怖くなかった。
イチの胸に抱かれている安心感は、きっと、他では味わえないものだから。
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