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木々が緑に生い茂り、蝉の鳴き声が響く今日この頃。
夏の日差しが肌に照りつけてくるこのむさ苦しい気候の中でも世界は機械的に動き続けている。社会人は会社に働きに、子供は外に遊びに、お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯にといった具合に私たちの周りでは日常的風景がいつでも広がっているのだ。それは学校でも同じである。
「あぁ、暇すぎる」
黒髪の少年は教室の窓の外の遠くを見つめながら呟く。
「ここはこの値を積分してlog4を───」
今は授業中のようである。
この教室に居る生徒は黒板に書いてあることをノートに取ったり、先生と睨めっこしたりときちんと勉学に取り組んでいるみたいだ。ある一人を除いては……。
「何もやることないし寝るか」
(‥‥‥‥‥‥zzzZZ)
先ほど窓を見ていた黒髪の少年はどうやら寝てしまったようだ……。
このやる気の無さそうな黒髪の少年の名前は畠中隼人(はたなかはやと)。年齢は十七歳で、県内でも少し名の通る名門公立高校に通う高校二年生である。
キーンコーンカーンコーン
「はい、今日の授業はこれで終わりにします。皆さん気を付けて帰りましょう。」
チャイムが鳴り、先生の終礼とともに教室にいた生徒は次々と教室から出ていき、教室に残っている生徒もあと数人となっていた。
(‥‥‥‥ふわぁ……)
「もうこんな時間か……」
目を覚ました隼人は眠そうな目をこすりながら鞄を横から取りだし、帰る支度をしていた。
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