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「さて、早く行かないとな」
生徒との会話を終えた彼は急いでいるのか、時間を気にしながら早足で教室を出ていく。
彼の周りには熱心に部活動に取り組んでいる生徒の姿がちらほらと見えるが、彼はそんなことには目も暮れずに早々と校門から学校を抜けた。
彼の家は学校から歩くこと十分、と比較的学校から近いところに住んでいる。彼の家に行くためには途中に右と左に分かれる道があるのだが、そこを左に曲がって真っ直ぐ進むと彼の家に辿り着く。
そして彼はその分かれた道に着いたようで一旦立ち止まった。
当然彼はいつもの通り左の道に曲がって家に帰宅……となるはずだったが、今日は少し事情が違ったみたいだった。予想外にも彼は家とは真逆の方向の右の道へと歩き出した。
そして彼はそのまま真っ直ぐ進む。
「よし、着いたか」
彼が少し安堵した声で呟く。
そんな彼の目の前には一軒の古びたアパートが建っていた。
彼はそのままアパートに入り、部屋の鍵を開けて中に入る。
(ガチャ!)
「隼人君、随分とゆったりとした通勤ですね。社長にでもなったのですか?」
突然、部屋の奥から大人びた少年の声が聞こえた。
「悪りぃ、ちょっと寝てたらいつの間にかこんな時間になっててよ」
「全く……、だいたい授業中に寝るなんて先生への冒涜ですよ?一生懸命僕達に教えて下さるのに──────」
どうやら説教が始まったようだ。
この上から目線で説教している少年は誰かというと、隼人の無二の親友であり、名前は東条大樹(とうじょうひろき)。隼人と同じ年で同じ学年であり、成績はいつも学年トップ、端正な顔立ちに知的な雰囲気を漂わせている。
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