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二十三時になった。ガールズバーはカウンターがほとんど埋まり、ボックス席にも客が座っていた。
ドアが開き、一人の客が入ってきた。谷川と同じ漁船に乗っていて、飲み仲間でもある。関西弁の男、古田だった。
「古田さん、いらっしゃい。谷川さんの隣、空いてるから」
ママに挨拶され、古田はママに手を振った。谷川の隣に座る。
「谷川くん、おつかれさん。さっきキャバクラでよ、ハタチの女の子がついてよ、何を話していいか分からんちゅうねん」
「そうか」
そっけなく答えた谷川に古田が続ける。
「なんやねん、ノリ悪いな。で、谷川くん、何時から飲んでんの?」
「ん、二時間前だけど」
「二時間前てか!!長っ!!」
古田がいつものオーバーアクションで言った。そしてチラッとカウンターの中のハルを見た。
「谷川くん、二時間もここにいた理由はこの女の子やな」
不意をつかれた谷川はタバコにむせた。
「ゴホッ、ゴホッ」
ハルはそんな二人を見ながらニコニコ笑っている。
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