VS 龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード

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喧嘩から二ヶ月。特に何もなく世界を放浪していた二人だが、今はだだっ広いだけの砂漠の上を一直線に歩いていた。 灰は懐から一枚の古びれた紙切れを取り出す。 「この先だな。あー長かった!」 大きく伸びをして疲労をアピールする。 そんな灰を無視して、葵は歩調を速めた。 彼の頭はひたすら己の欲求で満たされているので、今日もニヤニヤとした爽やかな笑顔は健在だ。 しかし半笑いの微妙な表情で、葵は灰の方を向いた。 「バトルする相手が欲しい」 「待ってくれ、この前ボコられたからちょっとトラウマなんだ」 露骨に嫌そうな表情の葵と灰。お前らはなんで一緒に旅してんだと言う外ないが、仲が悪いという訳でもないので彼らと知り合った者は反応に困る。 二人で変顔対決をしていると、灰が何やら怪訝な顔をした。 「……おい、人がいるぞ!」 どうやら蜃気楼に騙されたらしい。 「話を逸らすな、こんなとこに人がいるわけ……」 言いながら葵も振り向くが、様子がおかしい。目をこらしてそちらを凝視している。 「賊だ。人が襲われてる」 「なんだ賊か。葵、目いいな……ん? 賊!?」 ようやく事の重大性に気づいた灰。 まあ、気づいていて焦らない葵はもっとたちが悪いが。 「……バトルできるぞ」 「ちょっと行ってくるわ」 葵が走り出す。汗を吹いて歯を食い縛るその姿は、どこからどう見ても全力だったという。
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