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その日はいつもよりも風が強かった。
タチバナは仕事を変えては辞め変えては辞めを繰り返している三十五歳。
所謂フリーターと呼ばれる生き物である。
もちろんそんな男に結婚などできるはずもなく、独り身でアパートに住んでいた。
ある日、タチバナがいつものようにコンビニで週刊誌を立ち読みし、ただ当てもなくさまよっていると、不思議なことにいつもは人がゴミのようだと言いたくなるようなこの大通りに人の数が妙に少ない…
むしろ静かすぎるほどであった。
腑に落ちないと思いつつもタチバナが路地裏通りを抜けようとしたとき、それはやって来た。
いや、タチバナが気付いていなかっただけでそれはずっとタチバナの背後にいたのだ…
タチバナは決心し振り向いた。
だがそこには何もいなかった…
気のせいかと思いつつもふと地面を見つめてみると、タチバナは一瞬で青ざめることとなった。
そこには奇妙な形の、例えるならば、人の親指に目のついたような宝石が落ちていた。そしてそれを重石にするように一枚のチケットが置かれてのだった。
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