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その日の朝。
志々尾限はいつもの如く、朝から起きていた。
いや、これが普通なのであろう。
(……暇だな)
そう少し思った。
そして、寝よう。とまた布団に寝転んだ。
――――――――昼―――――――――
ピンポーン
「……ん…?」
気持ち良く眠っていた限の眠りを妨げる軽音。
「……誰だ?」
眠たい目をこすり、玄関を覗く。
人の気配がする。
「新聞ならいりまs「ちっげーよ!!」
即座に反撃の声。
(……良守か)
ふ、と身体から力が抜けた。
その事で、身体に力が入っていたことに初めて気付く。
取り敢えず可哀想なので家に入れてやることにした。
カチャ とドアを開ける。
「よ!志々尾!」
いつものようにケラッと笑っている良守。
「…アホ面」
思わず頬が緩みそうな所をがまんする。
「は!?取り敢えず入れろよ!」
また手に風呂敷を持っているところを見ると、またご飯を持ってきたのだろう。
良守が入ってからドアを閉める。
ドアチェーンもしておく。
なんとなく、なんとなくだ。
「失礼しまーす」
靴を脱いで部屋へ上がる良守。
ふと、限の鼻を掠める甘い匂い。
(……………?)
それは良守からしているように思えた。
「限ーー!!飯持ってきたから食おうぜ!!」
テーブルの上に風呂敷を広げ始める良守。
「というか、何でまた持ってきたんだ」
「父さんが持ってけって言ってるからだよ」
(嘘だけど、ね)
そう、限に会うためのダシに弁当を使ったのだ。
(…父さんごめん)
「………………」
無言で良守のテーブルを挟んだ向かいに座る限。
ふいにまた甘い匂い。
さっきよりも強くて甘い匂い。
身体が中からじわり、じわりと熱くなっていくのがわかる。
「………………っハ!」
息が上がる。
「お、前。何を…食べてる?」
「ああ、コレか?」
良守の口から出したもの。
それはあの飴だった。
飴の色は透明感のある紅だった。
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