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4月8日・午前5時30分
朝日が日本の大地を照らし始め、小鳥もさえずり始めた頃、某県の海側に位置する並木町に存在している孤児院[夢の扉]にも、その2つは届いていた。
そんな清々しい朝、[夢の扉]の中庭に、足を組んで頬杖をつきながら座っている少年が1人。
黒い瞳
精悍な顔つき
腰まで伸びた、長く艶のある黒髪
その姿を見た瞬間、誰もが美『少女』……と見間違える程の美『少年』だった。
(……何で僕が知らない女の子が僕の夢に毎日出て来るんだ……?)
「もしかしたらどこかで会ってて、僕が忘れてるだけ……なのかな??」
「なぁに1人でブツブツいっとるんや?」
少年は声のする方向へ振り向いた。
そこにいたのは、身長が140センチ位の老婆だった。
「あぁ。時子ばあちゃん、おはよう」
少年は老婆を見るなり笑顔でそう言う。
「……その様子やと、また例の変な夢を見たんやな?」
「はは……正解……」
自分が時子と呼んだ老婆にそう言われて、少年は困った表情でそう答えた。
「まぁこんなところで立ち話も難やから、ばあちゃんの部屋においで」
「いや、いいよ。そこまで気にしちゃいないし。それに、話し始めたら長くなって、日課の自主トレが出来なくなっちゃうし!」
少年はそう言うと腰を上げて、大きく伸びをすると、玄関の方へ駆け出していった。
「じゃ!今日も元気に行ってきます!!」
「はい。いってらっしゃい」
時子はそう言って少年に手を振った。
そして時子は少年の姿が視界から完全に消えると、お盆にのせて持って来ていた緑茶入りの湯のみを掴み、朝の日が差している中庭を肴に一人、お茶を飲み始めた。
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