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午前6時40分
少年は走り続けながら連日して見る夢について色々と考えていた。
しかしいくら記憶を掘り起こしても、少年の記憶の中に該当する少女は思い浮かばなかった。
学校で会ったことがあるのかと思い、今まで話したことがある女の子達の名前を頭の中で片っ端から並べてその子達の顔などを思い出してみたものの、その子達の顔と声は夢に出て来る少女とはまるで異なっていた。
結局、弾き出される結論は[不明]の二文字だけだった。
ピ・ピ・ピ・ピッ!
ピ・ピ・ピ・ピッ!
考えがぐるりと一周してスタート地点に戻った頃、少年が右手首に着けている腕時計のアラームが鳴り響いた。
電子音を聞いた少年は走るペースを徐々に下げていき、ジョギング程度のペースになったところでアラームを止め、時刻を確認した。
午前6時45分
腕時計の画面はそう表示していた。
時刻を確認した少年は周りを見る。
少年の視界には春の訪れを明確に表す満開の桜が飛び込んできた。
「あれ……いつの間に裏山に入ったんだ?」
(今日はここを走るつもりはなかったんだけどなぁ……)
少年はそう考えながら、再度時計を見る。
「まだちょっと時間があるな……よし。あそこに行って、身体動かすかな。」
少年はそう言うと、ジョギングペース程度のスピードのまま、少し離れた場所にある切り株に向かって走った。
そして切り株の元に到着した少年は足を止める。
「え~っと、広場は…」
少年はそう呟きながら、その切り株を覗き込んだ。
よく見ると切り株にはそれぞれの道に向かって矢印が記されており、矢印の近くにはどの方向に行けば何があるのかが簡潔に記されていた。
「こっちか。」
少年はそう言うと、左に90度方向転換して、再びジョギングペースで走り出した。
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