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しばらく狭い道を歩き続けると、少年は開けた場所に出た。
そこには樹木が一本も無い代わりに、朝の日差しを全身に浴びた色とりどりの花が咲き誇っており、その光景は[花園]という二文字が相応しいモノだった。
そしてその先に架かっている橋。
その向こうに、少年の目的地はあった。
それは高さ3メートル程の巨大な岩石だった。
少年はその岩石を視認し、橋を渡る。
そして岩石の前にたどり着くのと同時に、少年は首を傾げた。
(……今日は動物達がやけに静かだな……いつもなら橋を渡ったらすぐにリスとか鳥とかが寄って来るのに……)
「何かあったのかな……?」
少年はそう言うと辺りを見回した。
(気にしすぎか……っていうか、よく考えてみれば、動物達が毎回僕の周りに集まってくれるわけないか。)
少年はそう結論づけると、目の前の岩石に視線を戻す。
「よっ!」
そして少年は、地面から2メートル程上方にある太いロープに飛びついた。
ちなみにロープが地面から離れているのは、孤児院の小さい子達が興味本位で登って怪我をしないようにと少年が工夫した結果である。
ロープを登りきった少年は一度大きくため息をつくと、目の前に広がる景色を見た。
そこには木の柵に囲まれた、縦横30メートル程の岩の広場が存在していた。
表面は少年によってならされ、平面になっている。
少年は手近な柵に、着けていた時計とタオルを置くと、屈伸や伸脚などの準備体操を始めた。
「ふぅ~……よしっ!!準備体操完了!!」
10分間念入りに身体をほぐした少年は、最後に深呼吸をした後にそう言うと、腰を落として集中し始めた。
すると、先程までの子供らしい雰囲気は一辺し、鋭く研ぎ澄まされたものに変わる。
「ふっ!!はっ!!でぇやっ!!」
少年は息を吐きながら、素早い動きで空手の技を繰り出し始めた。
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