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ゴッ――!!
次の瞬間、機内に響いたのは乗客の誰もが予想していた男による甲高い銃の発砲音ではなく、鈍い音だった。
音の正体は、あの状況で青年の拳が銃の引き金を引くより早く、完璧に男の顎を捉えた音。
ドサッと男は気を失って崩れた。
青年はそれを確認してから乗客の方へ向き直った。
「えーと、すみません。
30分ぐらいでなんとかしてきますので、その間、騒がずに待っていてくれると助かります」
そう告げて、青年は乗客の次の言葉を待たずに、乗員スペースを区切っているカーテンの向こうへ消えて行った。
――――その30分後、青年の宣言通り、飛行機が近くの空港へ緊急着陸する旨が機内放送で流れ、更にその10分後には乗客全員が無事、地に足を着けていた。
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