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「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。」
そう言いながら聴衆の前に姿を現したその男は、右目にモノクルを掛け大きなマントで体を包んでいる。身長もかなり高いようで、見る者に威圧感を感じさせていた。
「さて早速ですが、私が皆さんにお聴きいただきたい話とは、ずばり......全てのポケモンの解放です。」
響き渡る男の言葉は誰もが考えたことすらなかった驚くべき内容で、聴衆は動揺してざわつき始める。
人々のそんな様子を気に留めることなく、男はさらに演説を続けた。
「人間とポケモンは共に暮らし、お互いを求め合い必要とする最高のパートナー。そう考えているのは、我々人間だけなのではないでしょうか?
ポケモンとは未知なる可能性が秘められた存在です。我々人間は、ポケモンから学ぶことが多くある筈なのです。
それにもかかわらず、人間はポケモンに対して自分勝手な命令を繰り返し、こき使っている。そんなことはない、と誰が言えるでしょう!」
男は興奮した様子で、少し早口になりながら人々に訴えかける。男の演説が熱くなるのに比例して、聴衆のざわつきもますます激しくなっていった。
「それではポケモン達があまりにも可哀想ではないでしょうか!?我々人間が、そんなポケモン達にしてあげられることは一体何なのか!.....それがポケモンの解放なのです!!」
ナミは複雑な気持ちになりながら、隣に立つチェレンにふと目を向けると、彼も何か考えているような鋭い目つきで、演説を続ける男を睨んでいた。
「ポケモンを解放することによって、人間との関係を切り離す。それが、人間とポケモンの本来在るべき姿なのです。どうか皆さん、ポケモン解放について今一度お考え下さい。それでは私のお話はこれで終わりたいと思います。ご清聴、ありがとうございました。」
落ち着いた口調に戻った男は演説を終えて、銀色の集団を引き連れて街の外へ歩いて行った。
残された人達からは拍手が起こるわけでもなく、それぞれが困惑の表情を浮かべながら静かに散って行った。
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