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「僕ならとっくに来ているよ、ベル。約束した時間通りにね。」
部屋の中にはすでに一人の少年がソファーに腰かけていた。
「チェレン!って嘘っ!?」
チェレンと呼ばれた紺色の髪をした少年は、赤色の眼鏡を片手で上げながら言った。
「私ってば急いで家を飛び出して来たから時計を持ってくるの忘れちゃったんだ!」
「ベル、君のことだから時間を確認できなかったことだけが原因じゃないだろ?」
そう。ベルはナミの家へ向かう途中、綺麗な花がある方へ、美味しい香りがする方へと寄り道を繰り返していたのだった。
そのため、約束の時間からは30分も遅れていた。
「……う。えーっと、それは….」
「まあまあ、チェレン。もうそのくらいでいいでしょ?ベルも気にしないで、ね?」
チェレンのお説教が長くなると感じたナミは、まだ何か言いたげなチェレンと顔を俯けていたベルの手を取った。
「私たち三人、友達でしょっ?」
笑顔で言うナミにつられて、二人にも自然と笑みがこぼれる。
「うん!ごめんね?ナミ、チェレン。」
「…まあ、もう終わったことだし、僕も悪かったよ。」
二人の様子を見て、ナミは静かに笑みを浮かべた。
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