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突如として何処からか現れたその少年は、開口一番に意味深な言葉を口にした。
少年の年齢はおそらく、ナミやチェレンと同じくらいだろう。どこか不思議な雰囲気を醸し出しており、綺麗に整った顔からは感情が感じられなかった。
「ずいぶんいきなりじゃないか。僕達に何か用でもあるのかい?」
「そんなに警戒しなくても大丈夫。僕が用があるのは、そこの彼女とポカブだから。」
怪訝そうな顔をするチェレンを尻目に、少年はナミの前で足を止めた。
「え、あ....あの、さっきポケモンが話したって....」
「うん、君のポカブのこと。」
表情を変えず純粋な目でナミを見つめる少年。いきなりのことにナミは戸惑いこそ隠せないが、少年の言葉には人を惹きつける不思議な魅力があった。
「私のポカブが、話したってこと?」
「唐突過ぎていまいち意味が分からないな。もっと詳しく説明して欲しい。」
「.....そっか、君達も"聴こえない"んだね。」
これまでずっと表情を崩さなかった彼は、初めて少しだけ寂しげな顔をして感情を表した。
「僕の名前は、N。君達は....?」
「私は、ナミ。この子はパートナーのポカブ。」
「僕は、チェレン。アララギ博士からポケモン図鑑の完成を頼まれて、僕らはそれぞれ旅をしているんだ。」
「アララギ博士......図鑑、か。君達もポケモントレーナーなんだね。」
少年は再び感情を感じられない表情で二人を見つめる。
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