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一丁前にスーツを着こなしステッキを持った長い髭を蓄えているウサギが、いつの間にか俺の前にいた。それはまるでどこぞの威厳ある哲学者のよう。大きな、二足歩行で俺に勝るとも劣らない背丈のウサギ。
そのウサギが、他でもない俺を見て言った。
「ようこそ、夢の世界へ!」
人語。存外、声音は高かった。
「……ゆ、め?」
「そう、ここは君が見ている夢の世界。だからなにをしてもいいんだ!」
「夢、ねぇ……」
まあ、こんなへんてこなウサギと普通に会話している時点で現実じゃないのは確か、か。
「さあ、君はここでなにをする?」
「と、言われても……」
突然無限の選択肢を与えられても困る。そんな戸惑いを察してか、ウサギは早々に打開案を提示した。
「したいことがないのなら、とりあえず私と同じことをしてみるかい?」
別段断る理由はなかった。
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