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「和哉っ」
ふいに呼ばれ僕は読みかけの本から目を離し、顔を上げた。
教室の入口に目をやると藤崎進吾が、笑顔で両手を振っている。
「…お前、まだ本読んでたのかよ。部活少し早く終わったんだ。一緒に帰ろーぜ」
「うん」
僕は読みかけの本に栞を挟み、鞄に入れ立ち上がる。
開けっ放しの窓から外に目をやると、晴れ渡っていた青空がぼんやりと赤色に染まりかけていた。
窓を閉めようと手を掛け、止まる。
三階の窓の外、ちょうど真下の渡り廊下を、伊藤茜が女友達と歩いていた。
「和哉ぁ?」
怪訝そうに急かす藤崎の声に、僕は慌てて窓を閉めた。
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