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校庭を出て緩やかな坂を下ると、眼下に広がる一面の海。
夕焼けに反射して水面が万華鏡のようにキラキラと光っていた。
風に乗って薫る潮風に春の気配を感じる。
こんな絵になる海沿いの歩道を、幼馴染みの藤崎と並んで下校するのは…何か色々と勿体無い気がする。
その時、藤崎が溜め息混じりに呟いた。
「はぁ~、こんな天気のいい日は野郎とじゃなくて女の子と下校したいよなぁ~」
…げ。僕と同じ事考えてる。
藤崎と以心伝心とかホント勘弁。
僕は眉間に皺を寄せ、黙りこむ。
「…彼女欲しいなぁ…」
「……」
「かわいい彼女とこの道を手を繋いで下校したいなぁ…」
「……」
「……」
「…ちょっ!僕の手を握るなよ!気持ち悪いな!誰かに見られたらどうするんだよ!?」
「イヤ、だってお前シカトすんだもん。人の話聞いてる?」
「聞いてるよ!」
僕は藤崎に握られた手を全力で振りほどき、大きく距離をとる。
そんな僕を見て藤崎はハッハッハと大きく笑った。
「和哉ぁ、お前は彼女欲しくないのかよ?」
突然降りかかってきた質問に、僕は思わず目を見開く。
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