きっとあの匂い

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外は暖かな日差しと共に、春風が流れていた。 結局沙耶の足は、家の前で止まった。自分が不便で仕方なかった。 自分に、自由は無いのだと、再び実感した。夢すら追いかけることは出来ないのだ。いくら手を伸ばしても、いくら走っても、その夢に近づくことすら、出来やしないのだ。 「沙耶!おっはー」 「ああ、なんだ恵か」 朝からハイテンションで駆け寄ったのは、沙耶の友達、遊佐 恵だった。 恵とは古くからの友達だ。 「‥またお母さん?」 呆れたような顔で、沙耶の顔を見つめた。 どうやら顔に出ていたらしい。彼女とは付き合いが長いため、なにかとすぐ分かってしまうのだろう。 「うん‥会社継げって」 「またかよあのクソババア、ガツンと言ってくるよ!」 「え!?ちょっと、ダメダメ!ダメだよ」 玄関に入りそうな恵を、沙耶は必死に止めた。 めんどくさいことになるのは目に見えていたのだ。
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