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別に嫌では無い。決して嫌では無いのだが、何故か沙耶はその誘いに素直に乗ることは出来なかった。
もしかしたら、今にでも夢を追いかけれる恵に少しばかり嫉妬していたのかもしれない。
「元気出してよ沙耶…」
「はあ…このままだと私本当に…」
ちょうど沙耶が深いためいきを吐くと、教室に授業開始のチャイムが鳴り響いた。まだまだ愚痴足りて無いのに、何で皆私の邪魔ばかりするのだ…なにも知らず悠長に登場した教師も…本気で心配してくれている恵すら、今の沙耶には怨めしい対象でしかなかった。
その頃、沙耶の母は出勤中で電車に揺られていた。昨日も一昨日もあまり寝ていない。今が一番忙しい時期というのに…娘がアレでは、娘の将来よりも会社の将来が心配だ。
自分でも気づかないため息が不意にもれた。その時だった。自分が座る目の前で、つり革をつかんでこちらを睨み付けるひとりの女…出発駅から不気味に思っていたが、その女が突然口を開いた。
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