海底からの。

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あぁ。 だんだん沈んでゆく…。 それは「予感」ではなく「経験測」だった。 サチが来るまで立っていられるのだろうか。 独りでに意識は薄まってゆく。 「奏汰君!最後なんだからこっちにも来てよ!シャンパン飲もうよ」 常連の里佳子さんがシャンパンボトルを片手に手招いている。 「もっちろーん!いただきに参りまーす」 混沌としていく自意識とは裏腹に、甲高く可愛げのある声が出るもんだ。 ボックス席のお客様との乾杯を済ませ、軽く両腕を使ってジェスチャーしながら、カウンターで待つ里佳子さんのもとへと向かう。 カウンターでお客様について飲むスタイルが俺には合っていた。 店舗全体を見渡すことができ、他のスタッフとの連携も執りやすく、新しく入って来たお客様を案内したり、またカウンターに座るお客様全員とまんべんなく会話できることが何よりのやりがいだったからだ。 しかし… (サチ遅いな…やっぱり今日という日が厳しかったか、それとも…) 思案していると、里佳子さんが「早く乾杯しよ!ぼーっとしちゃってさ!」 とたしなめるように俺に語りかける。 「あー!ごめんごめん。ホントにありがとね、ラスト来てくれてさ」 とっさにキラースマイルを駆使して里佳子さんとシャンパンを開ける。
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