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即座に俺は、温かみのある微笑みと、観る者の瞳をさらにリフトアップさせてしまうような出で立ち、そして角のない柔らかな言葉遣いから確信したので尋ねてみた。
「ここのママさん…ですか?」
すると彼女は
「とんでもないです。まだお店に入って2週間なんですよ。
それにほら、ママだったらこの時間まだグラス拭いてなんかないでしょうしね。」
「ああ、確かに。」
奏汰は早とちりを反省しながらも、やはり彼女がとても大人びて風格があるため、新人とはおおよそ信じ難かった。
「それじゃ、また来るよ。今度は一緒に飲もうね!
そうだ、名前教えてよ。」
すると彼女は
「ミストです。」
と答えた。
「ウッソ!!マジで!?それ源氏名なの!?」
あまりにも衝撃が強すぎて、店内に響き渡る声で叫んでしまった。
「あ、ああっ…!てっきりここの名前かと…。あたし、サチです…。よろしくお願いします!」
サチは薄暗いムードのある照明でもはっきりとわかるようなくらい、顔を赤らめていた。
先ほどまでの大人びた様子から少し、素の彼女に近づいたような気がした。
もう、俺が感じる事などナイと決めつけていた、懐かしく甘味と酸味が入り交じるような感覚に支配され、店をあとにした。
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